偉大なる孤食

孤独を味わうことで、人は自分に厳しく、他人に優しくなれる。

蒙古タンメン中本 麻婆豆腐定食

蒙古タンメン中本麻婆豆腐定食

・麻婆豆腐定食 1,120円

今でこそ株式会社となり関東圏に数十店舗を展開するまでに発展している蒙古タンメン中本であるが、その前身である「中国料理 中本」は個人経営の地元に根付いた飲食店であった。

この「麻婆豆腐定食」は、そのような個人の飲食店であった時代の名残を醸し出す一品。先代から続く由緒あり、そして伝統のあるメニューであるが、こちらは上板橋本店のみでの提供となる。

山盛りのライス、ラーメン皿に並々と盛られる樺太麻婆、味噌タンメンのスープ、唐辛子で和えるナムル(もやし)で構成され、さらにライスとスープはおかわりが無料という、腹が減ってしょうがない運動部の学生や、シンプルに大食いの人にはたまらないメニューとなっている。

だが、麻婆だけでも満腹になるほどの量が盛られているため、一般的な人間であれば、おかわりどころか完食が精いっぱいである。

この麻婆豆腐は通称「樺太麻婆」であり、蒙古タンメンに乗せられる麻婆(通称「蒙古麻婆」)とは異なるものである。注文が入ると調理人がいちから作り始める都度調理によるものであり、かなり手が込んだものである。

蒙古麻婆より辛さも強く、味も濃く作られているため、麻婆豆腐単品としてグイグイと食べ進めることができる、まさに中本のコンセプトの例に漏れない「からうま」な仕上がりとなっている。

そんな濃い味の麻婆を食べ進めるなかで、この味噌タンメンスープとモヤシがとても爽やかな存在となる。

延々と麻婆とライスを掻き込んでいくと、「飽き」までとはいわないが、少しだけ口の中をさっぱりさせて、濃い味がたまった味覚を一旦リセットしたくなる瞬間がある。

そのようなときに、あっさりの味噌タンメンスープで汁気を補い、熱いものだけが並ぶ料理のなかで唯一清涼感を得られるモヤシを食べることで、絶妙なバランスのなか麻婆豆腐を食べ進めることができるのである。

他にも、味噌タンメンスープの野菜と樺太麻婆をライスに乗せて「蒙古丼樺太Ver」を作ってみたり、味噌タンメンスープに樺太麻婆を加えて「蒙古タンメン樺太Ver」を試してみたりと可能性は無限である。

辛さも旨さも量も全て申し分ない高レベルの「麻婆豆腐定食」。中本はラーメン屋であるが、元々は町の個人料理屋なのである。食べ終わった後の満足感は他のどの料理よりも充足していることであろう。

先代から続く伝統あるこの定食、中本ファンであればぜひ。

 

 

蒙古タンメン中本 樺太ラーメン

樺太ラーメン

樺太ラーメン 720円 ・ネギ 70円

蒙古タンメン中本の先代である「中国料理 中本」。先代時代には人気メニューの一角としてファンに愛されていたのだが、現在では上板橋本店でのみひっそりと提供されている悲哀なる憂き目に遭っているラーメンがある。

それがこの「樺太ラーメン」。

蒙古、北極、中国と寒冷な地方の名が付けられたラーメンが多く存在する中で、この「樺太」ラーメンもそのひとつであることから、当時から店の看板メニューに近い位置に属していたという事実を匂わせる。

現在の中本の定番メニューはほとんどが味噌味であるなかで、この樺太ラーメンは醤油スープである。定番から外れていった経緯は味噌か醤油かの違いだけなのであろうか。

醤油スープに蒙古麻婆と少量のネギが乗るだけの超シンプルなラーメン。写真はネギを追加でトッピングしているが、デフォで提供されるのは本当にささやかな量である。

あまりにも単純な一品のため、物足りなく感じてしまうのも無理はないが、一度食せばその考えは遠のいていく。

まず第一として、醤油スープがとても旨い。味噌がメインの店であるため醤油スープがフィーチャーされることはほぼないが、醤油タンメン、冷し醤油タンメン、インドラーメンなどは滅茶苦茶にスープが旨いのである。

醤油とはいいながらも、醤油特有のカドの立った塩辛さは皆無であり、どちらかという塩スープに香りづけとして醤油が使われているような感じである。多分。なので甘味も感じられるほどに優しくまろやかなスープなのだ。

そしてシンプルすぎる故の意外なメリットがあるのだ。それは蒙古麻婆と物凄く合うということ。私は蒙古タンメンにのる麻婆ってそこまで好きではない。味噌味に味噌味の麻婆が加わると若干くどいように感じるからだ。

しかしあっさりの醤油スープであれば、純粋に濃厚なコクが加わるため、双方がブレンドされたときの絶妙な味は絶品である。

先代から続く旨さ…。時代は変わっても味は不変である。是非とも本店だけではなく、他の店でも食べれるようになってほしいものである。

(千葉店さん…樺太ラーメン定番にしてくれませんかね?ダメ?)

 

 

蒙古タンメン中本 スタミナラーメン

スタミナラーメン

・スタミナラーメン 850円 ・野菜大盛 70円

もう中本以外の記事書かないんじゃないかっていう程まで中本を愛し続けて3か月くらいですが、まあ例によって蒙古タンメン中本からの一杯をご紹介。

私くらい性懲りもなく中本中本と連呼して悦に浸っているような自己満足系中本ファンともなれば、どこの店舗でも提供している定番メニューだけでなく、店舗限定のマイナーメニューを賞味したくなるもの。

そしてこの「スタミナラーメン」はまさにそのマイナーメニューに属する一品であり、上板橋本店、錦糸町、柏(土日祝日)でのみ提供される。しかし、いくらマイナーとはいえ先代中本時代から定番メニューとして提供されていた由緒あるメニューなので、決して思い付きで考案したオリジナルメニューというわけでは断じてない。

先代から伝わる由緒あるメニュー、これは自称中本ファンにとっては必ず食さねばならない一杯であると意気込み、ラーメン一杯のためだけに錦糸町まで電車に揺られて訪れることとなった。

醤油味のスープに炒めた野菜(モヤシ、キャベツ、ニンジン、キクラゲ、タケノコ)と肉を塩味の餡で閉じ込め、半玉スライスと薬味のネギが添えられる、見た目は実に中本らしくない一杯。しかし、一度口にすれば、これがとても手間のかかった実に中本らしい一杯であるという事実に気付く。

醤油スープ、野菜餡、共に単品として申し分のないほどの完成度を誇る味付けがなされているが、これを一緒に食べたときにこのラーメンの真価がわかる。

見た目と違ってまろやかで優しい醤油スープに、やや攻撃的で濃い味の餡が合わさることにより、味の奥行が増し、結果として乗算的にコクと旨味が増すのである。

通常いろいろな味の要素を計算なしに掛け合わせると、味の統一性、方向性が迷子となり、何を主張したいのかがわからない料理となってしまうのである。

しかしさすがは職人が集う中本。恐らく先代の頃から変わらぬ味を忠実に再現しているのであろうが、ドンピシャと言わんばかりに味を決められるその技術とセンスには脱帽するばかりである。

提供される店舗が限られている上に、中本の辛いラーメンというイメージから遠く離れた一杯である故に、これを食すのは二の足を踏んでしまうのはわかるが、それでもなおこの先代から伝わるスタミナラーメン、中本ファンであるなら是非。

 

 

 

蒙古タンメン中本 サッポロ味噌ラーメン

サッポロ味噌ラーメン

・サッポロ味噌ラーメン 740円 ・野菜大盛 70円

あ、毎度どうも、またもや蒙古タンメン中本からの一品です。

今回紹介する「サッポロ味噌ラーメン」は、蒙古タンメン中本の先代である「中国料理 中本」の時代から提供されている由緒ある正式なメニューなのだが、2021年7月現在では上板橋本店と市川店でしか提供されていない店舗限定メニューなのである。

現在でこそ2店舗で提供されるが、市川店は2019年開店と比較的新しい店舗であるため、それまでは長らく本店限定の本当にマニアックなメニューだったのだ。

そしてなんと私、今まで散々中本ファン気取りの記事を上げておきながら本店には一度も行ったことがなく、このサッポロ味噌ラーメンは気になりつつも長らく未食であった。

そして今回ようやくありつけたわけです。このラーメンのためだけに市川まで向かって…。

サッポロ味噌ラーメンは都度調理であり、他のメニューに流用されないオリジナル味噌スープに、大量のもやしとニンニクが炒められてトッピングされる。

ラーメンの構成としては、もやし、にんにく、スープ、麺と物凄くシンプルである。肉すら入っていない。本当に旨いラーメンはゴチャゴチャトッピングするよりもシンプルな構成のほうがその旨味をストレートに味わうことができるという持論があるので、これはとても私好みだ。

まずはスープから味わう。味わった最初の印象は、思ったよりも辛い、であったが、すかさず旨味が押し寄せてきた。純粋なスープの旨さで言えば中本のメニューの中で一番好みかもしれない…。それほどまでにコクと旨味が引き立っていた。

シャキシャキのもやしはスープで味付けされながら炒められているのか、もやし自体に味が染み込んでいるため一心不乱にワシワシ食べられる。もはやこれだけで1つの料理だ。

麺はいつもどおりの中太麺。中本の麺はあまりフィーチャーされないのだが、こういうシンプルかつ辛さも控えめ、純粋に旨さを追求したようなスープでこそ、この麺の旨さや相性のよさを改めて認識できる。

ちなみに私は蒙古タンメンよりも味噌タンメン派であり、ラーメンには麻婆を入れないほうが好きなのであるが、サッポロ味噌ラーメンに限っては麻婆の投入はおおいにアリだと感じた。具材がシンプルなので、麻婆による味の変化がとても分かりやすく、麻婆の旨さをまたも再認識するのであった。

ところで今から10年程前まで、中本の上板橋本店には「蒙古ラーメン」というメニューがあった。それはこのサッポロ味噌ラーメンに麻婆が加えられたものであったのだが、看板メニューの蒙古タンメンと名前が似ているため紛らわしかったのか、惜しくも蒙古ラーメンはメニューから撤廃されてしまった。

 

店舗限定なのが勿体ないと思えるほどに感動を得たサッポロ味噌ラーメン。これを食べるためだけにまた私は市川に向かうことであろう。

 

 

神月 赤井町店 千葉県千葉市中央区

赤鬼とんこつラーメン

赤鬼とんこつラーメン 940円

今更ですが私は辛い食べ物が比較的得意な種族である。

このブログ常連の蒙古タンメン中本の北極ラーメンは苦も無く美味しく食べることができ、Coco壱番屋ココイチ)の10辛カレーや、ペヤングの獄激辛シリーズといった旨さを無視して辛さに数値を振ったような料理なんかもとりあえず食べきることはできるほどに辛さ耐性はある。

辛さというのは程度の差こそはあれ、慣れることのできる感覚なのだ。最初は誰もが参ってしまう辛味ではあるが、徐々にその辛味に耐性が生まれ、最終的にスカっとするほどの激辛料理を完食できたときに、言い知れぬ愉悦をも感じることが出来るのである。

私なんかは今では少しでも不愉快なことがあれば、辛い料理を食べて疑似的な爽快感を得て全てを無理矢理忘れようとするのだが、これが爽快感どころか完食も諦めかけてしまうほどの激辛料理に出会ってしまったら…?

と言う話。

 

とんこつ、醤油、塩、味噌、魚介豚骨つけ麺、まぜそば、果てはちゃんぽんまでとかなり手広く幅広いメニューを提供する千葉県のラーメン屋「神月」。

そしてその幅の広さはメニューの多様性だけに留まらない。なんとこの赤鬼とんこつラーメン、名が示す通り滅茶苦茶に激辛なとんこつラーメンなのである。

ベースはとんこつ醤油ラーメン。意図しているかは不明であるが、家系に代表されるラーメンは総じて「醤油豚骨」と呼ぶのに対して、こちらは「豚骨醤油」という名称。そう、豚骨の文字が前に来るのだ。それぞれのラーメンの特徴を鑑みたとき、醤油豚骨は醤油を、豚骨醤油は豚骨をメインに据えているところで差別化しているのではないかと素人ながら察する。

そしてこのラーメンは豚骨を前面に据えたとんこつ醤油ラーメンである。

とんこつラーメンに激辛のハバネロであったりブートジョロキアを足して激辛麺にする手法は豚骨ラーメンの老舗「一風堂」なんかでも既に取り入れている手法であり、正直辛さをウリにする中本の北極なんかよりも数段辛いのである。

この赤鬼とんこつラーメンも恐らくハバネロを使用しており、一口すすった瞬間からレベル違いの辛さがガツンと押し寄せる。ただ、最初の数十口くらいまでは豚骨と脂の甘さと旨味が辛さを多少中和し、レベル違いの辛さを感じながらもその中にある旨味はふんだんに感じることが出来る。

これは私も意外であったのだが、ここまでに辛さに特化した料理であっても、ここまで旨味を感じさせるのは、考えに考え抜かれた職人技であると言える。

ただし、ここまで辛いと旨味と辛味の逆転現象がいずれ生じるのである。そう、スープを飲んでも、麺をすすっても、辛味しか感じなくなる瞬間が到来するのだ。

それが訪れた瞬間というのが自分の辛味の限界なのであろう。あとの後はひたすら修行のように口に運ぶのである。

ただ、何度も主張しておきたいのであるが、このラーメンは辛さに重きを置いたラーメンであることは確かではあるが、それでもとても美味しいラーメンなのである。

その旨味を感じられなくなる辛さの限界値は人ぞれぞれであるが、その限界がくるまで私は確かにこのラーメンを「辛い」ではなく「美味しい」と認識していて食べていた。

辛さだけで言うと中本の北極ラーメンや冷し味噌ラーメンを平気で越えるのは間違いない。このクオリティの激辛ラーメンが、こういった激辛専門店ではないところで味わえるのも驚嘆でござる。

 

 

 

蒙古タンメン中本 北極ラーメン

北極ラーメン

北極ラーメン 850円

またも…またも蒙古タンメン中本から「北極ラーメン」をご紹介。散々中本のラーメンを紹介しておきながら、店の看板メニューがこのタイミングっていうのもどうなのよという感じだが、兎にも角にも北極ラーメンである。

「からうまラーメン日本一」という謳い文句を堂々と看板に掲げる中本の象徴がこの北極ラーメンと言えるが、まさに日本一を謳うに相応しい程の奇跡的なバランスで成り立つ辛旨ラーメンである。

中本定番メニューのラーメン(冷しメニューを除く)では文句なしに最高峰の辛さを誇り、中本にハマる人間はここを目指すことになる。ただ、決してここがゴールというわけではなく、ここから新たな道を見つけるターニングポイント的ラーメンでもあるのだ。

北極ラーメンとは、今にも湧き出しそうなマグマの如く真っ赤に染まる辛旨スープに、茹でもやし、香味油と香味野菜で炒められた豚バラ肉、存在感のある太麺、この4つの要素だけで構成される。かなりシンプルな構成になっており、ほぼ麺とスープだけをひたすら味わう具なし(実際はあるが)ラーメンと言って差し支えない。

シンプルなのは手抜きだからではない。それで成り立つほどに強烈な辛さと旨味がこのスープには凝縮されているので、これ以上要素を追加してしまうと、それは時に全体の足を引っ張るだけの要素となってしまうのだ。

また、北極ラーメンは他のメニューに比べて麺の量が1.5倍増加されている。つまりデフォルトで麺大盛りになっているのである。ラーメン全体の構成をシンプルにし、純粋に辛さと旨味を最大限に味わうために麺が増量されているのであろう。

見た目に圧倒されてしまい、北極ラーメンに二の足を踏んでいる方も数多いるとは思うが、蒙古タンメンが完食できる方であれば、北極もまあ美味しく食べれるであろうとは思う。一心不乱に麺をすすり続け、気づけば完食しているであろう。

ある程度辛さにも慣れ、これを美味いと感じるようになってしまえば、もうこれ以外の辛いラーメンなんて食べる必要がなくなってしまう。

なぜならこれ以上に辛さと美味さが融合したラーメンはないのであるから。

 

 

蒙古タンメン中本 特製樺太丼

特製樺太丼

特製樺太丼 790円

またもまたも…またも蒙古タンメン中本からの至高の逸品「特製樺太丼」をご紹介いたす。丼というだけあって言うまでもないがラーメンではなくご飯の丼である。このブログが始まって以来の初のラーメン以外のグルメである。まあラーメン屋の丼なんで、結局ラーメン屋じゃねえかよという話だが。

そして本題、この特製樺太丼であるが平たく言うと「とても旨い麻婆豆腐丼」と言ったところか。ゴロっと大きく切られた豆腐に特製味噌を利かせた麻婆に挽肉、ばら肉、ブロック状のたけのことアクセント程度の薬味としてのネギを加えた丼。実際食べてみると信じられない程にシンプルで淡泊であり、そして辛い。

注文が入ってから作られる都度調理に分類されるが、これは調理人の腕前に左右されるほどまでに味の焦点の幅が狭い、とても難しい料理だと思う。豚肉やタケノコといった旨味を生み出す具材はあるにしろ、麻婆の味配分がこの料理の全てであり、そこのブレが料理の味のブレに100%に近い比率で直結するため、誤魔化しが一切きかないのである。

ただ、そこは信頼と安心の中本。多少のブレはありつつも、どの料理人も忠実にレシピを守り高水準の美麗なる料理を提供してくれる。

ライスの量は200g、300g、400gから選択でき、料金はどれも均一である。具材がシンプルなのであまりにもライスの量が多いと飽きが出てしまうので、200gか300gをおすすめする。ちょっと物足りなく感じてしまうかもしれないが、具材とのバランスを考えれば200gが一番最初から最後まで美味しく食べれる。個人的には。

ひたすらに麻婆とライスを掻き込む料理であるが故、口直しに水を飲みたくなってしまうが、ここで水を飲んでしまうと、辛さに慣れた口内の感覚がリセットされ、そこに激辛麻婆が容赦なく押し寄せてくるので注意である。

北極や冷やし味噌など汁物であれば水を飲まなくても最後まで食べきることはできるであるが、この特製樺太丼に関しては汁気がないので難しい。

その場合でも、サイドメニューのプチ味噌タンメンスープを注文すれば味噌汁感覚で汁気を補うことができるので、おすすめである。

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ラーメンだけではなく、ご飯ものまで手を出し始めたら、あなたはもう立派な中本マニアである。