偉大なる孤食

孤独を味わうことで、人は自分に厳しく、他人に優しくなれる。

神月 赤井町店 千葉県千葉市中央区

神月 赤井町店 魚介とんこつつけ麺

・魚介とんこつつけ麺 840円 ・ネギ 210円 ・麺増量 無料

「濃厚魚介豚骨つけ麺」とカテゴライズされるラーメンがある。00年代後半から2010年代前半にかけて爆発的な流行を生み出したラーメンであるが、その発端は濃厚スープのつけ麺をメインとする名店「六厘舎」であることに疑いの余地はないであろう。六厘舎の異常とも言える爆発的人気により、それを目指した後発の濃厚魚介豚骨スープを専門とするラーメン屋が其処此処に乱立し、「濃厚魚介豚骨つけ麺」というカテゴリーに括られるラーメンの食べ比べができるほどであった。

近年では流石にその流行も落ち着いたと見えて、濃厚魚介豚骨スープを専門とするラーメン屋は珍しいと言える程までに減少したと伺える。

そして、その流行の廃りを全マイナス方向で受けている人間がここにいる。もちろん私である。

私は率直に言って濃厚魚介豚骨つけ麺が大好きなのである。ほんの10年前までは繁華街を歩けば濃厚魚介豚骨つけ麺に当たるとも言える状況であったのに、現状はインターネットで念入りなリサーチを重ねて、そして遠出してようやくありつける敷居の高いものとなってしまったのだ。

しかもそれは濃厚魚介豚骨を専門とする店ではなく、数あるメニューの中の一端で提供される言わばサブジャンルとして提供するモノとなってしまっている。

 

スーパー前置きが長くなってしまったが、今回ご紹介するラーメン店「神月」。あらかじめ断っておきますと、こちらも特段「濃厚魚介豚骨」を専門とする店ではなく、豚骨、塩、醤油、味噌と多様なメニューを揃える店である。ただそのような中で、濃厚魚介豚骨つけ麺を専門とするわけでもなく、とても美味しい「濃厚魚介豚骨つけ麺」をご提供いただけるとてもありがたいお店なのである。

これが神月の「魚介とんこつつけ麺」。普遍的な濃厚魚介豚骨つけ麺と真っ先に異なる点がある。

それは麺が中細麺であること。

濃厚魚介豚骨つけ麺と言えば、もはや常識と言わんばかりにどの店も極太麺を使用しているので、最初このつけ麺と対面したときは正直「ん?」と思った。

そんな矮小な疑問も麺をたっぷりつけ汁に絡ませて一啜りすれば、跡形もなくなる。今まで常識と見做されていた濃厚スープに対する極太麺…。実は濃厚なスープに対しても中細麺はとても合うのだ。

コシのある中細麺は濃厚なスープにたっぷり絡み、一啜りするとまるでスープを飲んでいるかの如く拾い上げる。そして中細と言えどしっかりとコシのある麺は存在感があり、かと言って決してスープを邪魔をしないためとてもバランスがいい。

スープは濃厚も濃厚なドロドロつけ汁。あまりにも麺によく絡むので最終的にはつけ汁が足りなくなってしまう程である。スープをわざわざ飲まずとも、麺を食べただけで結果的にスープも完飲できてしまうので、食べ終わった後の満足度はとても高い。

さらに、つけ汁はそのまま飲んだら確実に火傷するであろうほどに熱々で提供されるのも高評価ポイントの1つ。つけ麺は必然的にスープが冷めるので、冷めることを前提とした温度で提供されるこのつけ麺は最後の最後まで美味しくいただける。

今回は濃厚魚介豚骨つけ麺にカテゴリーされるラーメンの紹介となったが、この神月はこれに限らず多様なメニューを展開する。

殺伐としたゴリゴリの専門店ではなく、こうした気軽に入りやすく多種多様なメニューを揃えるラーメン店は必要である。それでいてこの神月は全てにおいて専門店を凌駕するほどの完成度を誇るラーメンを提供してくれるのである。