偉大なる孤食

孤独を味わうことで、人は自分に厳しく、他人に優しくなれる。

神月 赤井町店 千葉県千葉市中央区

赤鬼とんこつラーメン

赤鬼とんこつラーメン 940円

今更ですが私は辛い食べ物が比較的得意な種族である。

このブログ常連の蒙古タンメン中本の北極ラーメンは苦も無く美味しく食べることができ、Coco壱番屋ココイチ)の10辛カレーや、ペヤングの獄激辛シリーズといった旨さを無視して辛さに数値を振ったような料理なんかもとりあえず食べきることはできるほどに辛さ耐性はある。

辛さというのは程度の差こそはあれ、慣れることのできる感覚なのだ。最初は誰もが参ってしまう辛味ではあるが、徐々にその辛味に耐性が生まれ、最終的にスカっとするほどの激辛料理を完食できたときに、言い知れぬ愉悦をも感じることが出来るのである。

私なんかは今では少しでも不愉快なことがあれば、辛い料理を食べて疑似的な爽快感を得て全てを無理矢理忘れようとするのだが、これが爽快感どころか完食も諦めかけてしまうほどの激辛料理に出会ってしまったら…?

と言う話。

 

とんこつ、醤油、塩、味噌、魚介豚骨つけ麺、まぜそば、果てはちゃんぽんまでとかなり手広く幅広いメニューを提供する千葉県のラーメン屋「神月」。

そしてその幅の広さはメニューの多様性だけに留まらない。なんとこの赤鬼とんこつラーメン、名が示す通り滅茶苦茶に激辛なとんこつラーメンなのである。

ベースはとんこつ醤油ラーメン。意図しているかは不明であるが、家系に代表されるラーメンは総じて「醤油豚骨」と呼ぶのに対して、こちらは「豚骨醤油」という名称。そう、豚骨の文字が前に来るのだ。それぞれのラーメンの特徴を鑑みたとき、醤油豚骨は醤油を、豚骨醤油は豚骨をメインに据えているところで差別化しているのではないかと素人ながら察する。

そしてこのラーメンは豚骨を前面に据えたとんこつ醤油ラーメンである。

とんこつラーメンに激辛のハバネロであったりブートジョロキアを足して激辛麺にする手法は豚骨ラーメンの老舗「一風堂」なんかでも既に取り入れている手法であり、正直辛さをウリにする中本の北極なんかよりも数段辛いのである。

この赤鬼とんこつラーメンも恐らくハバネロを使用しており、一口すすった瞬間からレベル違いの辛さがガツンと押し寄せる。ただ、最初の数十口くらいまでは豚骨と脂の甘さと旨味が辛さを多少中和し、レベル違いの辛さを感じながらもその中にある旨味はふんだんに感じることが出来る。

これは私も意外であったのだが、ここまでに辛さに特化した料理であっても、ここまで旨味を感じさせるのは、考えに考え抜かれた職人技であると言える。

ただし、ここまで辛いと旨味と辛味の逆転現象がいずれ生じるのである。そう、スープを飲んでも、麺をすすっても、辛味しか感じなくなる瞬間が到来するのだ。

それが訪れた瞬間というのが自分の辛味の限界なのであろう。あとの後はひたすら修行のように口に運ぶのである。

ただ、何度も主張しておきたいのであるが、このラーメンは辛さに重きを置いたラーメンであることは確かではあるが、それでもとても美味しいラーメンなのである。

その旨味を感じられなくなる辛さの限界値は人ぞれぞれであるが、その限界がくるまで私は確かにこのラーメンを「辛い」ではなく「美味しい」と認識していて食べていた。

辛さだけで言うと中本の北極ラーメンや冷し味噌ラーメンを平気で越えるのは間違いない。このクオリティの激辛ラーメンが、こういった激辛専門店ではないところで味わえるのも驚嘆でござる。