偉大なる孤食

孤独を味わうことで、人は自分に厳しく、他人に優しくなれる。

花鳥風月 山形県酒田市 酒田のラーメン

酒田ラーメン

花鳥風月ラーメン 醤油 930円

ラーメンに対する消費量が日本で一番多いのは、実は山形県らしい。消費量というといろんな捉え方があるかもしれないが、ここでいうところの消費量とは端的にどれだけ金を使っているか、ということである。つまり、山形県はラーメンに一番金をかけているということなのだ。

そんな意外な「ラーメン大国山形県」には数多くのご当地ラーメンが存在し。今回ご紹介する酒田ラーメンもその1つである。

正式には「酒田のラーメン」という、このご当地ラーメンの特徴はというと、イマイチ統一性がないことである。

あらかじめ断っておくが、これは決して質が悪いとか、そういうことを言っているのではなく、酒田のラーメンというカテゴリーに対する客観的な見地であって、ラーメンそのものに対する言及ではない。

改めて酒田のラーメンの特徴を挙げると、「自家製麺率が80%を超える」、「魚介出汁のスープ」という2点。

最初の「自家製麺率が80%を超える」という部分に着目してほしい。つまり、自家製麺でなくても酒田のラーメンに成り得るということである。酒田のラーメンと呼ばれるラーメン屋の自家製麺率を調べたら、なんと80%を超えていました、という結果論である。

2番目の魚介出汁のスープというのは明確にカテゴライズされているので、非常にわかりやすいが、この特徴だけでラーメンを1つのカテゴリーとして特徴づけることがそもそも無理難題なのでは?

つまりそう、あまり明確なカテゴライズをされていないこと自体が、まさに「酒田のラーメン」の特徴なのである。自家製麺率80%という事実を鑑みると、強いて言えば「麺にこだわっている」というところが特徴に挙がるか…。

これでなければならない、という固定概念がない自由な発想のラーメンというのは実に素晴らしいと感じる。要は旨ければいいのである。そして酒田のラーメンはどの店のものも総じて旨いのである。

ラーメンに対して無駄に語ってしまったが、こちらが今回訪れた酒田のラーメン「花鳥風月」。

透き通る程に美麗な醤油スープに、3~4日間も熟成させるコシのある自家製手もみ縮れ麺。そして海老ワンタン、肉ワンタン、チャーシュー、煮卵がトッピングされる、この店の名を冠する看板メニュー「花鳥風月ラーメン」である。

巷のラーメンではスープはこだわり抜くが、麵やトッピングはあくまでスープを殺さない主張の少ない無難なもので固める、というのはよくある図式だが、この花鳥風月はスープ、麺、トッピング全てが計算しつくされた良さを持ち、それが音楽でいうところの心地よいアンサンブルとなっているのだ。ニルヴァーナのように、スキルや才能に隔たりはあるが、それでもそれぞれのメンバーに良さがあるのと同じである。果たしてこの例えで伝わるのか。

一言で言ってしまえば、優しい味、とでもなってしまうのか。まあ確かに二郎系や中本や家系と比較した時にはどう考えたって優しい味になるのであるが、前述のとおり全てのレベルが高水準なため、食べ終わった後の満足感は、いわゆるコッテリ、ジャンク系のラーメンと肩を並べるほどである。決して物足りない、などということはない。

こういうシンプルな醤油ラーメンを専門とするラーメン屋は、今時あまりお目に掛かれない。是非近所に欲しいものだ。