蒙古タンメン中本 麻婆豆腐定食
今でこそ株式会社となり関東圏に数十店舗を展開するまでに発展している蒙古タンメン中本であるが、その前身である「中国料理 中本」は個人経営の地元に根付いた飲食店であった。
この「麻婆豆腐定食」は、そのような個人の飲食店であった時代の名残を醸し出す一品。先代から続く由緒あり、そして伝統のあるメニューであるが、こちらは上板橋本店のみでの提供となる。
山盛りのライス、ラーメン皿に並々と盛られる樺太麻婆、味噌タンメンのスープ、唐辛子で和えるナムル(もやし)で構成され、さらにライスとスープはおかわりが無料という、腹が減ってしょうがない運動部の学生や、シンプルに大食いの人にはたまらないメニューとなっている。
だが、麻婆だけでも満腹になるほどの量が盛られているため、一般的な人間であれば、おかわりどころか完食が精いっぱいである。
この麻婆豆腐は通称「樺太麻婆」であり、蒙古タンメンに乗せられる麻婆(通称「蒙古麻婆」)とは異なるものである。注文が入ると調理人がいちから作り始める都度調理によるものであり、かなり手が込んだものである。
蒙古麻婆より辛さも強く、味も濃く作られているため、麻婆豆腐単品としてグイグイと食べ進めることができる、まさに中本のコンセプトの例に漏れない「からうま」な仕上がりとなっている。
そんな濃い味の麻婆を食べ進めるなかで、この味噌タンメンスープとモヤシがとても爽やかな存在となる。
延々と麻婆とライスを掻き込んでいくと、「飽き」までとはいわないが、少しだけ口の中をさっぱりさせて、濃い味がたまった味覚を一旦リセットしたくなる瞬間がある。
そのようなときに、あっさりの味噌タンメンスープで汁気を補い、熱いものだけが並ぶ料理のなかで唯一清涼感を得られるモヤシを食べることで、絶妙なバランスのなか麻婆豆腐を食べ進めることができるのである。
他にも、味噌タンメンスープの野菜と樺太麻婆をライスに乗せて「蒙古丼樺太Ver」を作ってみたり、味噌タンメンスープに樺太麻婆を加えて「蒙古タンメン樺太Ver」を試してみたりと可能性は無限である。
辛さも旨さも量も全て申し分ない高レベルの「麻婆豆腐定食」。中本はラーメン屋であるが、元々は町の個人料理屋なのである。食べ終わった後の満足感は他のどの料理よりも充足していることであろう。
先代から続く伝統あるこの定食、中本ファンであればぜひ。